【行動ファイナンス】なぜ「損小利大」が難しいのか?

証券アナリストジャーナルの平成19年6月20日号に、大阪市立大学大学院経営学研究科後期博士課程の閻 石(えん せき)という方の『「損は切って、利は伸ばせ」:言うは易く、行なうは難し』―ディスポジション効果に関する研究サーベイと考察―いう論文が掲載され、目を引きました。一読しましたが、優れた論文であると思われました。

以下は当論文の内容のうち、「投資家として覚えておいたほうが良い」と感じられた要点部分を筆者が抜粋し(一部筆者流の表現に変更)、さわりだけ紹介するものです。

・ 株式投資の世界では、「損は切って、利は伸ばせ」という格言がある。しかし、これは、言うは易く、行うは難しである。現実の投資家はこの格言に反して利得の確定を急ぎ、損失の確定を先送りする傾向が強い。個人投資家と機関投資家を問わず普遍的に観察されるこの傾向は、行動ファイナンスではディスポジション効果(disposition effect)と呼ばれ、多くの研究者の関心を集め続けている。

・ 多くの投資家は、価格の上昇局面では「勝ち組」を急いで売却してしまい、価格の下落局面では、「負け組」を売却できずに大きな損失を蒙ってしまう傾向がある。この傾向は、Kahneman and Tverskey(1979)のプロスペクト理論に基づくShefrin and Stateman(1985)の分析をきっかけにディスポジション効果と呼ばれるようになった。

・ このディスポジション効果は、投資家の心理的なバイアスによる側面が強い。「勝ち組」を保有する場合、投資家は株価下落リスクや下落時の後悔を回避しようとしたり、利益の確定で投資の成功を顕示しようとしたりする。逆に「負け組」を抱える場合、投資家は、投資の心情的に受け入れがたく、挽回のチャンスに過大な夢を見がちとなる。この二つの場合における異なる心理は投資家を利得の確定に走らせ、損失の実現に二の足を踏ませるわけである。

とりあえずこのあたりまで。いかがですか?結構興味深い内容ですよね?

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