浜口です。今回はパンローリングHP「渡辺幹夫のエトセトラ」コーナーに7月16日付で掲載されている記事を抜粋し、紹介させていただきます。皆さんのご参考になれば。
低PER株はバリュー株か?
「バリュー株の定義がよくわからない。バリュー株とは低PER株のことか?」と尋ねられることがしばしばあります。今回はここのところを整理してみたいと思います。結論から言うと、現在の私の理解は以下の通りです。
1.バリューはグロースの逆の概念であり、分類する基準はPERではなくPBRである(狭義のバリュー株)。低PER銘柄は、「グロース-バリュー」の銘柄分類とは独立した、別の考え方である。
2.資産運用のオーソドックスな分類では上記の通りだが、一部ではEPS等の「利益」をキーとして割安なものをバリュー株とする考え方も台頭している(広義のバリュー株)。
以下に詳しく説明します。
「グロース-バリュー」の分類は、株式運用の実務、具体的には年金資金の株式運用実務において、グローバルに取り入れられている基準(運用スタイル)のひとつです。バリューはグロースの逆の概念であり、分類する基準はPBRです(PERではありません)。これがオーソドックスかつ古典的な考え方です。私はこれを、「狭義のバリュー株」の概念と整理しています。
PBR、PER、ROEには、以下の関係が成立しています。この関係式はとても重要なので、ぜひ覚えておいてください。
PBR=PER×ROE
この計算式を見ると明らかなのですが、PBRがキーになり、「低PBR銘柄=バリュー株」「高PBR銘柄=グロース株」と大きく2つに分類されます。これが基本的な考え方です。ちなみに、日本株のスタイル・インデックスの草分け的存在である、“Russell/NRIインデックス”におけるバリュー/グロースの区分も、PBRによって行われています。
そして、ここが重要です。この計算式を見ると、PERを軸として「低PBR銘柄=バリュー株」「高PBR銘柄=グロース株」と分類されるわけですから、PERはバリュー/グロースを分類する基準から独立していることがわかります。低PER 銘柄は、「グロース-バリュー」の銘柄分類の流儀とは別の考え方なのです。つまり低PER銘柄には、グロース株とバリュー株が共に存在するということになります。
資産運用のオーソドックスな分類では以上の通りですが、一部ではEPS等の「利益」をキーとして割安なものをバリュー株とする考え方も出てきています。私は現状、この考え方を「広義のバリュー株」と分類・認識しています。「狭義のバリュー株」の応用分野という位置づけをしており、また比較的新しく出てきた分野だと考えています。なお「広義のバリュー株」という考え方は、現状では年金資金の株式運用等、運用の実務で市民権を得られている概念ではありません。
ちなみに低PERのグロース株投資の手法は、運用の世界ではGARP(Growth At Reasonable Price)と呼ばれます。GARP戦略を用いた投資信託も、広く運用・販売されていますよね。
「広義のバリュー株」という考え方については、これに基づいて、今後有益な分析ができる可能性も多々あると思われます。が、「狭義のバリュー株」の考え方と混同するとうまくありませんし、しばしば議論が止まってしまいますので、私はこのように両者を分類しています。
Speak Your Mind