浜口です。少し前の話になりますが、11月15日付日経ヴェリタスの小峰孝雄教授による「国内市場、人口減では縮まない」の内容が目を惹きました。
「日本経済は、長期的には少子高齢化に伴う人口減少で尻すぼみ」との見方が多い中で、日本の人口減少が国内市場を縮小させ、輸出頼みになるとの議論には錯覚があると反論しています。以下、要点を引用します。なお()内は当方が追加。
1. 人口減少で国内市場が縮小と言うのは、以下の通り論理矛盾
① 国内で市場が縮小した分を輸出で補うことに成功したとしよう。すると一人当たりGDPあるいは一人当たり所得は必ず高まる。その所得を使えば国内需要は増えるから、国内市場は必ず拡大する。つまり「国内市場が縮小するから海外市場を開拓せよ」という考えは、「お金を(海外で)稼ぎはするが(その儲けを日本人は国内で)使わない」という不思議な状態を想定していることになる。
② 総人口の減少率は2006年から2030年で0.1%から0.7%程度。この程度の減少であれば、国内GDPの成長でカバーできる。
2. 人口減少=国内市場縮小論は、以下の2つの錯覚に起因
① ミクロとマクロの錯覚。個々の企業にとっては、確かに人口減少=国内市場縮小。ただしその結果、経済成長している海外市場開拓により稼いだ所得が国内で使われると、シルバーマーケットのような新しい市場が生み出され、新しい産業・企業が恩恵を受ける。こうして産業・企業の栄枯盛衰があるのは、人口減少時代に限ったことではない。
② 量と質の錯覚。人口が減少する一方、高齢化の進展により、高額商品が売れるようになる。たとえば、60歳代の購入単価が28歳以下の購入単価の何倍かを計算すると、布団が4.9倍、旅行かばんが2.6倍、婦人服が2倍、たんすが1.8倍、など。
特に②は、少子高齢化により、個人消費は量的には減っても、金額的には増加するとのシナリオ。「量と質の錯覚」確かにその側面はありますね。年配の人はユニクロなどには行かず、百貨店で高額商品をかまわず購入する傾向はありますよね。
この議論、とっても重要です。本件おそらく、今後様々なかたちで、識者がコメントしていくことでしょう。それを頭に入れながら考えて行きたい。
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