付加価値とはどういうことか

林則行さんの本「株の公式」(ダイヤモンド社)を献本していただきました。さすがに読み応え十分ですね。お勧めできます。参考になる部分が随所にあります。例えば下記。
付加価値とはどういうことか。
スターバックスでハウスブレンドを買うと、250グラム1100円です。一方、東京穀物取引所に上場されている豆(アラビカ種)を同量買うと、80円程度です。これは海外で栽培・収穫された生豆を日本まで運んできたときの値段です。もちろんスターバックスの豆は取引所で取引されている豆よりも高級でしょうが、それにしても1100円にまで化けるのです。ここに付加価値の秘密があります。
普段、口にするブレンド豆はいろいろなコーヒー豆を混ぜ、酸味や奄美、苦味を調整します。このブレンドの良否で価格が決まります。この過程がもっともノウハウが必要なところであり、ここにお金を払っているのです。これが付加価値です。
そして氏は、「ソニーやパイオニアが儲からなくなってきた。これらの会社の秀でた技術や経験部分が、新興国のライバルでもできるようになってきていて、利潤が取れなくなっている」としています。
つまり、「ブレンドの付加価値」にあたる部分の魅力が低下しているということ。なるほどなあと思わされる視点ですね。

為替市場の規模

浜口です。為替市場の一日の売買代金って、どのくらいか分かりますか?
為替市場は株式市場と異なり、市場集中義務がない。為替市場の売買代金は、意外にわかりづらいですよね。
最新号のエコノミストにおいてで、第一生命経済研究所 主席エコノミストの熊野 英生氏が、世界の為替市場全体の一日の売買代金を推定されてました。一日の売買代金、370兆円とのこと!さすがに為替市場、桁違いに大きいですね。
このうち、貿易(輸出入)に関連するのは、わずかに2兆円であると。2兆円以外は、概ね資本移動で説明がつくんでしょうね。一部、投機も含まれましょうが。
それにしても、為替市場の売買代金はもの凄い金額。これを前提に考えると、さきのわが国当局の為替介入額、一日2兆円では、現在の為替市場では、効果は限定的とおのずとなりますよね。
為替市場は購買力平価ではなく、資産運用上、より有利な国に資本移動する流れで、説明がつくと考えます。

せつない気持ち

浜口です。
最新号のBRUTUS696号の特集は、「せつない気持ち」です。白くて、とてもインパクトのある表紙。本屋の店頭でも、結構目立ちますね。
フランダースの犬とか、荒井由美「卒業写真」の歌詞とか、さよならドラえもんとか、1987年日本シリーズ最終戦9回表2死涙の清原和博とか、92年夏の甲子園松井秀喜5打席連続敬遠とか、さまざまなせつない事例が紹介されている。正直、当方は目頭が熱くなり、どうにもならなくなる。胸が締めつけられる。一読する価値は十分ありますね。
さて一方で、日本の輸出企業も、相当に「せつない」ですよね。10/19の日経新聞一面では、「ホンダ 下期の想定レート80円 円高で見直し」との見出しが目につきました。ギリギリのコストダウンをしても、なかなかいきつくところのないまた円高。
通貨安競争なんでしょうが、そのツケが日本の輸出企業に回る。
はあ~日本の輸出企業、円高対応の姿勢が実にせつない!エンドレスかの如く思えてくる。
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しかしこう考えると、アメリカ経済ご都合主義のオバマ氏に対しては、せつない気持ちは起こらないな。全く。

日本株に03年類似の上昇サイン

浜口です。角山さんやふり~パパさんから、日本株は新安値をつける銘柄数が結構多く、市場のムードが良くないとのコメントがありました。まあ、そんな感じですね。先週金曜は実際、全業種とも下落とのことですし。円高による業績懸念もあるのでしょうが、金融機関の持ち合い解消売りを吸収し切れてない部分もあるんでしょうかね。
さて一方で日経ヴェリタスの10/17号に、大和証券の木野内さんが日本株について、03年に類似の上昇サインという寄稿をされてます。最近、2003年との類似点が目立ってきたとして、下記を指摘されてますね。
1. 直近になって、米国景気の底入れ時期が確定された。
2. M&Aの報道事例の増加
3. 韓国やインドなど、資本財のウエイトが高い市場が堅調
4. REIT市場が堅調
そして「03年には、韓国株やREIT指数に数ヶ月遅れて日経平均が上昇した。筆者は今年も日本株が本格上昇するサインが出始めてると期待している」とのご託宣。
まあ、世界的な金余りの渦中です。米国株式も「景気2番底懸念で売り」が、「景気鈍化に伴う金融緩和で買い」とセンチメントが簡単に変わってしまう状況。風向きが変われば日本株も・・となっても不思議ではないと思うんですけどね。

1867年

浜口です。皆さんはこの3連休、如何にお過ごしでしょうか?
昨日のNHKの龍馬伝。高杉晋作が亡くなるシーンがありました。今後、坂本龍馬は途中で暗殺されますが、1867年の大政奉還に向け、維新の動きが加速する展開になる。
さて調べ物をしていたら、この大政奉還の1867年は象徴的な年。欧州でも下記のようなことが起こってる。
・ドイツでマルクスが「資本論」第一巻を出版。
・アンリ・ネストレがスイスにチョコレート工場を建設(後年のネッスル社)。
江戸時代後半にはもう、マルクスが資本論を書いていた!日本の100年近く先をいっていたイメージなのかな?欧州は。この時点で。
日本では、経済学なんてもの、考え方など全然ない、黒船が来てさあどうしましょう、そんなレベルですよね?
欧州から見ると、日本は、新興国みたいなもんだったんでしょうね。江戸時代の鉄砲などの武器、明治時代の工業化の設備も、多くは欧州から買ったもの。たしか官営製鉄所が前身の八幡製鉄(新日鉄)も、多くはドイツから導入した設備で開始したはず。
翻って今、日本はアジアに工作機械などの設備を輸出していて、それもありアジアが「世界の工場」に・・・。順番ですかね。

証券会社が日本株を勧めなくなってる

浜口です。先般、ある大手証券会社の支店長さんと話をしたんですが、この支店ではもう、日本株を積極的に勧めてないとのこと。1に投信、2にアジアの個別株式なんだそうです。
理由は明確、手数料。投信は、特に新興国ものなど高リスク系は3%と高い手数料が取れるし信託報酬ももらえるので、こちらを重点的に営業する。
アジアの個別株式はもっと手数料が高く、さらにおいしい。為替の手数料も含めれば、インドやインドネシアあたりは、往復で8%近く取れるとのこと。ただし証券会社の対面販売は、年配の人、女性が多い(若中年男性は、ネット証券が多いですよね)。このような人たちにアジアの個別株は、リスクが高すぎなので、そうそうは勧められない。相場が逆に行ったときの苦情対応が大変だから。だからアジアの個別株は、投信ほどは裾野が広がらない。その点で言うと、やっぱり優先順位は投信だって言うんですね。
一方で日本株は、90年代の規制緩和以降、手数料が低くなりすぎた。買いで取れる銘柄も少なく、回転が効かない。今後、日本株が上がる局面もあるでしょうが、そういう時はアジア株も上がるでしょうし、手数料はアジアのほうが高いので、どうしても日本株が2の次に・・・・ということでしたね。
証券の支店は、手数料が上がりやすいのはどんな運用資産かを、常に追求していく。顧客にも儲けてもらいたいが、それは顧客が儲かることで、「次はこの投信で」と回転が効き、また手数料が取れるから。長期成長シナリオを高らかに掲げ勧めた投信なのに、2ヵ月後は乗換えを勧めたりする。
このあたりの姿勢は、昭和の時代から変わりませんね。

今こそバリュー株投資

浜口です。日経ヴェリタスの9/12号以降、井出正介さんが「今こそバリュー株投資」という解説をされてます。今回で4回目。今、切抜きを順番に読んでるんですが、なるほどなあと思わさせられる点もあり、参考になりますね。
9/19号、2回目の連載には、以下のコメントがありました。株価という要素を抜きにした、中長期的な株式投資に対するリターンの考え方。
1. バリュー株投資を「優良銘柄群に対する長期預金」と考えると、強いて言えば、ROEという変動金利型の長期預金といったところ。
2. 株式投資に伴う総利回りは、中長期的にはROE並みになる。
まあ、そう言われてみればそうかなと。当方も含め多くの投資家は、常に株価・投資タイミングというものを意識して投資を行う。この立場からは、なかなか思い浮かばない視点だと思いましたね。
株式に長期投資する根拠になる、ひとつの考え方といえましょうね。

Cup with handle

日本の株式市場は、ひきつづき地合いがあまりよろしくないですね。
インサイダー情報というわけでもないんですが、エクイティファイナンスの噂がある銘柄が順当にファイナンスを実施する。そしてお約束通り(?)、株価を下げている。そういった銘柄の空売りの回転が効いている・・・・そんな状況らしい。
が、中には上がっているものもある。
以前少し書いたこともある、東証一部の某自動車銘柄。国内小型トラックでトップシェア。昨日、5月の高値を抜いてきた。これはCup with handle状態を経ての新高値と理解して良さそう。当面ほったらかしで良いかな?

昔の野村證券が復活?

ふりーぱぱさんが、野村證券の回転売買について書かれてました。ご指摘のとおりと思います。「数字が人格」と言われた、昔の野村證券のやりかたが復活しつつあるということを、最近良く耳にします。
運用業界でも、野村證券の回転売買は非常に話題になっている。こういうことも聞こえてくる。ご参考まで。
例えば投信運用会社A社が運用している投信(乙としましょう)、これを野村證券が「取り扱いたい」と言って来る。A社は「野村のダントツの営業力で、投信乙を熱心に売ってくれるぞ!」と無邪気に考え、投信乙の販売会社として、業界トップの野村證券を加える。
しかし野村の事実上の狙いは、近隣のB銀行に預かりになっているA社の投信乙だったりする。投信乙の販売会社になったことで、野村はこの投信を自身の預かりに移管させることが可能に。野村の営業マンは、B銀行で投信乙を保有している投資家に猛然とアタックをかけ、投信乙を野村に移管させた後で、回転売買の対象にする・・・・
投信が解約されるA社、移管により資産流出する近隣B銀行は、当然怒りますよね。
仮に以上が事実とすると、これは行儀が悪い気がする。まあ、好ましいこととは思われませんね。

日本の国債バブル

今日の日経朝刊一面に、銀行の国債買越額最大という記事がありましたね。
先般ある地銀支店長と銀行の国債買いの話をしました。「地元企業では融資は伸びず、無理に伸ばそうとするとすぐに不良債権になる。東京のブランド企業なら少しは資金ニーズがあるが、当行レベルではほとんど利ざやを取らせてもらえない。ゆえにこの低金利でもまだ、国債で運用したほうがましマシ」「どの銀行も現状が国債バブルであることを理解しているが、銀行、特に地銀のメンタリティは横並びだし、バブルを見て見ぬ振りをしている。まあ我々は変化を好まぬ茹でガエルですから。証券会社の狩猟民族的なメンタリティがうらやましいですなあ」と言ってましたね。
まあ、きちんと現状分析できてるなとは思いましたが(笑)
銀行経由で個人のお金が国債に回っており、結果、国内の低金利を支えている。支えているというより、銀行による静かな国債バブルが発生しているので、足元で低金利ということ。この行く末がどうなるのか?金利上昇、債券価格の下落、金融機関の損失・・・・
驚くべき「ゆうちょ銀行」のB/Sでも書きましたが、「国債を買える」といっても限度があるしね。
まあバブル崩壊がいつかあるのなら、株式がその前に一相場あってからにして欲しいですね(笑)。